私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

side,奏


「なーんで野郎共と、こんな中歩かにゃならんのよ」


時刻は20時45分。今にも消えそうな街灯が照らす中、路地裏を進み更に人気のない方へと向かう。


いつもの面子だしこんな場所だしで気が滅入るってもんよ。


「仕方ないでしょう。ノラが指定したのがこの先にあるのですから」


溜息まじりに昴は答える。おめーは相変わらず俺に冷たいよねー。


なんだなんだ。俺にも文やゆうちゃんみたいに愛嬌があればいいのか?それにしては俺の顔に色気がありすぎるから難しいところだな。


そんな事を言えば冷ややかな目を向けられるだろうしお口はチャックしとこうね。


にしてもノラ、ねぇ・・・。


記憶は昨晩まで遡る。






理事長からあのリボンを預かったことで明日以降ましろんに直接聞く機会ができたとして、ただそれを待っている訳にはいかない。


情報はいくらあっても困らないからな。


カラン、カラン、とベルが来客を告げる。


俺達は馴染みのバー、"segreta"へと足を運んだ。


「よう、久しいじゃねーの」


優雅に煙草を咥えたこの男は、こちらには目もくれず開店準備を進める。


俺達が来ることは想定済みってわけね。


今更驚かねぇし話が早くて助かるってもんだ。そのままカウンターへと向かう。