路地裏を抜け、月明かりが照らす中住宅街の塀の上を歩きながら帰路につく。


時刻は深夜2時を回ったところ。


日中では目立ってしまってできないこれを何処か気に入っている。


フードを更に深く被りながらポケットに手を伸ばす。


これが無いとな。


慣れた手つきで口にくわえた煙草に火をつけ、肺いっぱいに煙を落としこむ。


身体に毒でしかないのは理解しているが、この感覚が自分は生きているのだと実感できて息がしやすくなるのだ。


あちらとここではあまりにも空気が違いすぎる。


そんな事を言えばお前は馬鹿ねと苦笑するんだろうな。


あァ、笑っちまうよな?


月に手を伸ばしてみる。


そのまま手を握ったところで届かない。当たり前だ。


どこまでもその場で輝き続ける月に向かって笑みを零す。




















「待っててな───────、ましろ」