私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「帰るわ!」


ガラリと扉を開ければ、


「おやおや、もうお帰りで?送って行きますよ」


そんな声が聞こえる。


「結構よ!」


楽しんでるの丸わかりなんだよ。


廊下にも響くような音で閉じたのを確認してからまっすぐ昇降口へと向かう。





帰ろう帰ろう帰ろう帰ろう!!!


っほんと、他人と関わるとろくな事がない!!!


息が上がらない程度に走っているはずなのに胸が苦しい。


なんでっ、なんで!


特段男に対して免疫が無いわけでもないのにっ、


顔の整った男を見るのだって慣れてるはずなのに!!!


前髪をくしゃりと握るようにして顔を隠す。





なんで、





顔の熱が収まらないんだよっ!!!!


未だに無駄に綺麗なあいつの顔が離れないのもムカつくし!!!!


本当にムカつく!!


びっくりマークやらはてなマークやらが頭の中を埋め尽くすのを理解しながら否定するように頭を振る。




「動揺なんてするなっ」




そんな独り言はいつの間にか到着していた生徒1人居ない昇降口へ消えていった。


念の為上履きを持って帰ろうと鞄を開ければタイミングよく仕事用(・・・)の白い端末がメールの通知を告げる。


思考を紛らわせたい私は過去一の速さでメールボックスを開ける。そこには一通のメールが届いていた。


内容は『ある人物 について』とだけ。


おや。


それに対して『本日21時 下記の場所へ』とこちらも要点だけを添えて返信する。