私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

きっと彼女自身様々な葛藤をしながらこの場にいるのだろう。そんな中でも前向きに信じる気持ちを捨てずに光を求めているんだ。


彼女は闇を知った上で光があることを信じ続けられる強い子だ。それは私が得られなかったもので、こういったところにも惹かれたのだと妙に納得した。


「ごめんね、知ったような口をきいて傷付けて」


そのふんわりとした頭を撫でながら謝罪をすればまた嬉しそうに目を細める優里。


「ううん、ちょっぴり傷付いたけど同時にねそこまで理解してくれる子が皆以外に居たんだって安心したの。姫のいいところばかりを見て話し掛けてくる人が多いから・・・」


「まさかこの様な結果に落ち着くとは。貴女はそう簡単に絆されるような人ではないと思っていましたが」


「あら私可愛い子には甘いのよ？」


私は表情筋が死んでいるとよく言われていたからなぁ。裏表のない子に関しては羨ましいとさえ感じる。


過去を懐かしんでいれば視界の外。そう、後ろから手が伸び警戒などしていなかった私は呆気なくそいつの元へ手繰り寄せられる。


「本当にそれだけか？」


皇の言葉が耳朶を打つ。


至近距離で見つめ合う格好となったが本人はどうでもいいようだ。


「っ」


その黒色の瞳は全てを見透かして来るようでこいつらと居てはじめて居心地の悪さを感じた。


逸らしたいのに逸らせない。何故ならこの感覚の正体を知っているから。


「あんた、楽しんでるでしょ」