「とっとと渡しなさいよ」


通されたソファに招かれざる客というのを重々承知の上で荒々しく座る。


苛立ちなんざ隠すつもりもない。


「そんな慌てなさんな。ほい」


斜め向かいに座る水嶋の手に揺られる赤。


「ちっ、」


その手からかっ攫うようにして赤を取り返しいつもの場所に結びつける。ヘアゴムの上から結んでいるためその作業はすぐに終わる。


あの後帰宅した私は髪にあるはずのこれが無いことに気づき、あの無駄に広い家をひっくり返す勢いで探し続けた。


数時間経っても見つからないため今朝昇降口が開くと同時に校内な入ったわけだ。


探している私にあの後リボンを拾った、今は第2音楽室に保管しているためついてきて欲しいと連れて来られたのがことの経緯である。


「拾ってくれたことには感謝するわ」


本当に安心した・・・。


長くなると思うからと谷垣が出してくれた紅茶を一口口にする。


心を落ち着かせながら通された第2音楽に目をやる。
ただ、音楽室の面影なんてピアノと有孔ボードしかないのだが。


やたら高そうなこのソファにテーブル。極めつけは大画面のテレビに繋がれたゲーム機。好き勝手やり過ぎだろこいつら。


紅茶なんててっきりペットボトルが出てくるかと思いきやティーカップで出てきたしな。