「物騒?ふふ、そうよね物騒よね」


龍二の言葉に笑うその姿は彼女が文に対して笑った姿とどこか似ている。


「精々足掻きなさいな」


必要以上に関わりたくないのだろうそれだけ告げて理事長は去ってしまった。嵐のような人ですね・・・。








「役者と道具は揃った。そうだろ?」








皆して呆気に取られている中そんな言葉が落とされる。


そこに居たのは獲物を見つけた百獣の王。


何年も共に過ごしたはずの相手にはじめてぞくりと粟立つ。


朔夜は基本的に無欲だ。感情に流された場面なんて過去に一度あった程度。


いつでも冷静で客観的に判断できるからこそいつも本当に同年だなのだろうかと疑っていた。


こんなおもちゃを見つけた子供のような欲望に満ちた顔なんて、知らない。


「朔夜くん・・・」


「優里は好きなようにすればいい。お前が決めたことだ俺達はそれを否定しない」


「・・・ありがとう!」


「俺は認めねえぞ・・・」


「文ってば諦めなー?朔夜がこう言ってんだからさ」


「あの件についてもまだ聞けてないしな」


「昴」


騒がしい中私一人にだけ聞こえるように呼ばれる。


「分かるな」


その問いに乾いた笑いが出る。どれだけの付き合いだと思ってるんですか。





「仰せのままに」





ああ可哀想に。


きっと貴女は知らないのでしょう、


我らが王にこんな表情をさせている事に。


欲を持たなかった者に求められる事に。











明日からはじまるであろう新しい日常にらしくもなく期待を抱いた。