「うッ──、ぐはァッ」


壁に向かって蹴り飛ばせば唸りをあげるソレ。


よっわ。


1人だけ喋れるように残したけど、こんなんじゃろくな収穫はねぇな。


「ねぇ、それだけ?」


角で縮こまり辛うじて意識のある奴に声を掛ける。俯いていた顔を前髪を掴みこちらに向かせるもガタガタと震えて使い物になるか怪しいところだ。


「ほ、本当にそれだけなんだっ!ここらで好きにしろとしか──!」


少女とも少年とも見てとれるフードを深く被った相手に怯える男。


相手の足元には体格のいい男が6名程横たわっていた。


それは男の仲間だったもの。


「・・・ふーん」


更に細められたその目にまた体が跳ねる。


(本当に人間かよこいつ・・・!?)


自身のプライドの為なおも悪態をつく思考とは異なり、自身の口や体は許しを乞おうと必死だ。そんな異常に更に困惑する。


既に興味は薄れたのだろう溜息と共にくるりと踵を返した。


「・・・はっ、」


一気に吸い込んだ空気に苦しさを覚える。


見られている間呼吸をすることも忘れていたのだ。


ふざけるな、がら空きのその背中に1発でもお見舞いしてやらねぇと気が済まない、と男は思う。
だが、額からは脂汗が浮かび手足は追いかけてはならないと使い物にならない。






こんなやり取りでさえ通りのひとつ向こうにあるネオン街の音にかき消されてしまう。