優里さんは龍二の後ろ、文は奏の後ろにしがみつきながら必死に心臓を抑えている。


「理事長・・・」


「やめてよねー人を幽霊みたいに。これだから餓鬼は嫌いなのよ」


「なら何故こちらに戻って来たんですか?」


「あんた可愛げ無いって言われない?」


「これが性分なものでして」


先程までましろさんに向けていた顔は何処にやら。
心底不快だという態度を隠しもしない。生徒にこんな態度でいいんでしょうか仮にも理事長ですよね?


「大人として1つ助けてやろうかと思って。はい」


そう言って優里さんに渡される赤い何か。


「綾波がつけていたものか」


「ご明察。流石トップといったところかしら」


朔夜の言う通りこれは彼女がつけていたリボンのようだ。


鮮やかな上質な布に金の刺繍でMと入っていて、大切に扱われているのだろうと見て取れた。


「これをどうしろと?」


「これはあの子の大切なものなの。きっと、いいえ絶対に探しに来る。あとはお分かりね?」


「・・・なんでこれを俺たちに?」


「青春してもらいたいから、かしらね」


どこか遠くを見つめ笑みを零す姿は慈愛に満ちていて、この方は心の底から彼女のことを想っているのだと分かる。


関わりを持ってもらいたいのか、そうでないのかはっきりしませんね・・・。


「無くすのだけはやめてよね。そんなことしたら私、あの子に殺されちゃうわ」


「殺すなんてそんな物騒な・・・」