私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

他人にこのリボンに触れさせたくはないのだが、ヒメであればまぁ・・・。どこかに落としてしまうことの方が嫌だしな。


大人しく待っていれば離れていくのを感じて私もスッと姿勢を戻す。


「ありがとう」


「どういたしまして。さて理事長としてあの餓鬼共に話さないといけない事があったんだったわ」


面倒だわと不機嫌になるヒメ。


面倒という言葉にはあんな奴らに時間なんて割きたくないという意図があるのは容易に想像ができてしまうため、私にはあんなに甘いのになと思わず笑ってしまった。


「必要なことなんでしょ」


「そーなのよ。理事長なんて楽だろうと考えてたのに思いの外大変、辞めようかしら」


ヒメならやりかねないな。


「ヒメが理事長で色々と助かってるのよ。今辞められたら困っちゃう」


「ふふ、人を転がすのが本当得意ね。そんな事言われたら辞められないわ」


「今更?」


「それもそうね。名残惜しいけど私はもう戻るわ。1人で帰れる?」


「もう高校生なんだけど?しかも2年生。大丈夫だよ」


「小さい頃から知っている私からしたらいつまでも子供よ。・・・じゃあね」


「じゃーね」


手を振り返しながら昇降口へと向かう。
























「ごめんなさいね」

悲しげにそう呟いたことも、


その手の中に"赤"が握られていることも気付かないまま。