私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「・・・もういい。昴、小林と高橋は?」


「回収して病院に送り届けてる最中です」


「なら南との話を進める。龍二と奏は怪我人の確認を頼るか?」


「任せてくれ。優里ちゃんとましろはそこで待っていてくれ」








呆れられた感は否めないが、説教が始まらなかっただけ良しとするか。


少し距離を置いて護衛を付けられてしまっているため動くこともできず、優里と横並びに階段に腰掛けぼーっと眺める。


「あの、ましろちゃん・・・」


「なーに?」


「来てくれて、ありがとうね。あたし助けられてばっかりだぁ・・・」


膝をだき小さくなる優里の肩に頭を預ける。


こういう時に限って言葉選びが難しい。自身の手のひらを眺め伝えたいことを思い浮かべる。


「大切な人が危ない目に合ってる時、何も出来なかったら私はそれを一生悔いる。そうしたくないから動くの」


「そう、だね。あたしも今までに何度も思った。・・・あたし、ましろちゃんを守れるような人になりたい。大切な人だから」


大切な人、


守られるのは苦手だ。私は弱い人間なのだと否定されているようで。


だが、理由は大切な人だからだという。


そんな風に言われたら何も言えないじゃないか。


「・・・ありがとう」


ならば有難く受け取ろう。


「ふふ、ましろちゃんも甘えん坊なところあるんだね」