詳細は知らない。


だけどあの方が消えた事だけは分かった。


それからは色欲と呼ばれながらもトップの皆様方とは距離を置いていた。あの方が居ないならそこに居続ける意味もなかったから。


完全にあの頃に戻ったのだと、空っぽの日々を過ごした。


そうしたら、アンタが東に居るって言うじゃん?


私、決めたの。



私からあの方を奪ったアンタを、





「殺してやるわ!綾波 ましろ!!!!!」







力を込めた拳を軽々と避けられ、たまらず舌打ちを零す。


この女は後ろに避けながら手すりの上に着地する。


「はぁ、はぁ、」


なんで息すら上がってないわけ?


ほんとっ、気に入らない。


あの方の真似でもしようっての?


でもやっぱりアンタって抜けてる。


後ろに下がれば落ちる。避けるとすれば左右のどっちかのみ。片方で殴ってそれを避けるものなら瞬時に蹴りを入れれば避けられないよね?


私は再度腕に力を入れてこの女目掛けて伸ばす。






私のかんがえた通りに動くはずだったの。




それが、




拳を受け止められてそのまま引かれて、





「駄目だろ?相変わらず脇に力が入っていない」





耳元で囁やかれて。



思考が切り替わる前には鳩尾に勢いを落とさないまま蹴りを入れられるだなんて。


ああ、


ああ・・・、







私、何も知らなかったんですね。


やっと真実に気づくなんて。



「ずっと、お慕いしておりま、し、た・・・」