許せなかったのはあの女。


その年の冬にいきなり現れた憎い女。





始めて見た瞬間からその容姿が気に入らなかった。


次に、恥ずかしがってあの方の後ろに隠れて。あの人に背中を押して貰ったこと。


(・・・は?)


あの方に触れることも触れられる事も私は許されないのに?


「ましろ」


愛おしいと見てもらえて、名前を呼んでもらえて?


ふざけんな!!!!


私はそんな顔一度も見たことも向けられたこともないのに!?その瞳に映ることもできないのに!?


憎くて憎くて仕方がなかった。





「悪いけど、東の中学に通って向こうの情報取ってきてよ」


中学の2年、夏休みに入った頃だった。副トップからそう告げられたのは。


断りたかった。


だって、あの方の傍から離れたくない。


だけどこの人なら簡単にあの方と私を離す事ができるのも事実。私は渋々従った。


目立たないように西の情報は落とさないようにと地味な格好をした。好きなお洒落が出来なかったのは辛かった。


長い間貴方様とも会えないし。


あの時の私はまるで貴方様と会う前に戻ったみたいだった。