もう駄目だと、悲観していた。


だけどこの気持ちとは裏腹に鉄パイプが優里ちゃんに届くことはなかった。














僅かな鈍い音と共に男と優里ちゃんの間に割って入った人物によって止められたのだ。


グレーのパーカーを深く被った人物に俺達は固まる。


「相変わらず短気な女。私はここにいるじゃないの」





ここに居るはずのない少女の声が響いて、驚きは困惑に変わる。


なんで、君はここに居るんだ?


安全な場所に居てくれって伝えたじゃないか。


「・・・ましろちゃん?」


衝撃でフードが外れ露になった後ろ姿に優里ちゃんの声が聞こえてくる。


ああ、やっぱり君なんだね。


そこには優里ちゃんに振り下ろされるはずのパイプを腕で受け止めているましろの姿があった。


「邪魔」


うんざりとした声で目の前の男を蹴り飛ばす。


男はそのまま壁にぶつかりぴくりとも動かない。その威力にさらに困惑する。


「ちょっとましろん!動かないで隠れててって言ったよね!?」


「私返事してないわよ」


「・・・奏」


来てくれていたのか。いつの間にか優里ちゃんの傍に居た奏に安心する。


「やっぱり来ると思ったー。アンタ、大事な人の為なら自分がどうなろうと知ったこっちゃないもんね」


「・・・久しぶりね愛ちゃん。その小さい頭でよく考えたものね」