side,龍二


「それじゃひとまず1発いってみようか!」


「優里!!」


あの女の言葉に俺達はすぐに動いた。だけど南の奴らの数が多すぎるっ。


負ける事はないんだろうが優里ちゃんの傍にはすぐには行けない状況だ。


「お前があの女の言いなりというのは本当のようだな?」


朔夜が対峙している南のトップ、椎名 悠斗(しいな ゆうと)に静かに問うのが聞こえる。


「ああ、今の俺にはあいつ以上に優先するもんなんて何もねーよ!」


・・・落ちたな。


中立を掲げながらも喧嘩が好きだった南のトップ。たまに朔夜が喧嘩相手になりながらいい関係が築けていたと思っていたのに。





「・・・お願い、します」


拳を受け止めた目の前の彼が呟く。この子は確か椎名の補佐をしていた子か?


「あの女のせいで南は狂ってしまったッ!・・・またあの頃の南にッ」


戻したいという言葉は聞こえなかった。彼は優秀な人だったと聞いていた。何度も現状を変えたいと動いたんだろう。その上での現状が悔しくてたまらないんだろう。


「・・・っ、」


だけど、今優先すべきは優里ちゃんだ。


攻撃を交わしながら優里ちゃんへ視線を向ける。傍には鉄パイプを振り上げる男が居た。


「優里ちゃん!!」


守ると誓ったのに、


あの時と違ってもう傍に居るのに、








─────男は力いっぱいにその棒を振り下ろした。