「それじゃひとまず1発いってみようか!」


くるりと回って顔を近付かせる愛ちゃん。はしゃぐ姿は遊園地に連れてこられた子供のよう。


だけどさっきの言葉はあたしに向けられた言葉だって気付いているから。震えるあたしにそっと頬に手を添える。





下の皆は愛ちゃんの言葉で一斉に動いたみたいだけど南の人達がそれを阻んでるみたい。金属同士が当たる音、鈍い音と一緒に唸る声も聞こえる。


皆の呼ぶ声も聞こえるけど鼓動が煩くてよく聞こえないや。


「ごめんねー、優里ちゃん達にはもう興味ないんだけどさ!来た時に貴女がボロボロだったらアイツ、きっと絶望してくれるはずだからさ!」


恨むならアイツね、とにんまりと愛ちゃんは笑った。


すぐ近くには鉄パイプも持った男の人。その棒が大きく振り上げられた。





恨む・・・?そんな事しないよ。


ましろちゃんはあたしと居る事でこの数ヶ月だけで、沢山危ない目にあってるもん。


これぐらい甘んじて受けるよ。


でも鉄パイプで殴られるのは痛いからなぁ。できたら1回で気絶させて欲しい。これもわがままかな?


護衛の子達はあんなにボロボロになってるんだもん痛みも我慢しなきゃ、だよね。


だけど明日から夏休みだからあまり長く入院はしたくないなぁ。








あたしはぎゅっと目を瞑って振り下ろされるのを待った。