私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

side,優里


「───っぐ!」


「んーッ!!!」


拘束されて口元も塞がれているため、力なく倒れる護衛の子をあたしはただ見ている事しか出来ない。


もう一人の子は殴られ続けててさっきから動いていない。早く病院に連れて行かないといけないのに。


助けは呼んだから皆来てくれるだろうけど、それはいつになるの?もし間に合わなかったら、


『ごめん春野さん!先生にこの荷物資料室まで運ぶよう言われたけどこの後委員会あってさ!』


あたしが皆の傍を離れたから・・・。


あの時と同じ、自分自身の無力さを痛いほど実感する。


「いつ見ても滑稽な姿ァ」


聞き覚えのある声ヒールの音と共に口元の布が外される。


「小林くん!高橋くん!」


「・・・自分の事より他人を優先するところも相変わらずみたーぁい」





「───────────久しぶりだね、愛ちゃん」





あたしの言葉に愛ちゃんは顔を歪ませ舌打ちをする。


愛ちゃんが居るということはここは南、でいいのかな。本当は今にでも駆け寄りたいし、何がしたいの、どうして貴女がここに居るの、って声を荒らげたい。


だけど貴女達に利がある今この子達にこれ以上手を出されないためにも冷静で居なきゃ。


最後に見たまだあどけなさが残る姿とは変わって色気が増して髪色も違う愛ちゃんだけど、声にその赤い爪。そしてあの時と似たこの状況ですぐに気付いたよ。


「あの時の続きでもしたいの?」


「へぇー、あれで男性恐怖症になったって聞いたけど随分と冷静だねェ?」