私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「水嶋を住込みで雇いたいの」


雇いたい、ね。


「うんうん。って、えぇ!?」


雇いたいって言ったこの子!?


「衣食住つきで月20万。どう?」


驚きで固まっていれば不満があるのだと勘違いしたのか、考え込む素振りをみせるけど驚きが隠せないだけだからね?


否定しようと口を開くと同時に思い出したかのように続けるましろん。


「あ、肝心な事言ってなかったわ。契約の条件として学費と弟さんの入院費も持つわ。もちろん今回の600万も含めてね」


「・・・本気?」


「私嘘つかないわよ。それにさっきのお金も600万も私のポケットマネーですぐ払える金額。口座の残高でも見せるべき?」


ふるふると首を振る。


「ましろんが嘘が嫌いで、嘘つかないのはもうよく分かってるよ。けど・・・、なんでそこまでよくしてくれるの?」


有難いに尽きる。だけど、ここまで良くしてもらう義理は無いはずだろ?


どんなに考えたってましろんにメリットはない。


これって夢なんだろうか?俺とうとう頭とち狂った?


「勘違いしないでよね、ずっと家政婦は雇いなさいって言われてていい加減どうにかしなきゃとは思ってたの。見ず知らずの人間を家に入らせるよりかはまだいいと思っただけよ」


まあ、と続ける。


下を向いていた俺の顔を上に向かせる。いつの間にかフードは外れててその長い髪がカーテンのように周りから俺達を切り離す。