私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

だけど、返ってきたのは石鹸の香りと温もりで。


「一人でよく頑張ったわ」


ゆうちゃんによく見せる愛おしいというような声。


恐る恐る背中に腕を回す。君はこんなにも心強い存在なのにその身体はあまりにも細くて。


しがみついてないとどこかに消えてしまうような儚さから手を離すことができない。


良くないなぁ。こんなの抜け出せないじゃん。


ずっとこうしていたいと願ってしまうのは必然だ。








「ありがとましろん」


どれくらい経ったかは分からない。名残惜しいものの、ましろんから離れる。


「話聞いてもらってスッキリしたよー」


また疲れたらこうしてもいいかな。いやでも、その時は流石に剥がされそう。


ゆうちゃんと文からはましろんから離れろって騒がれそうだし、昴と龍二は女の子相手に何やってんだって説教始まりそ。朔夜は・・・、考えたくないなー。


「あら、話は終わってないわよ」


「へ?」


ましろんは悪戯な笑みを浮かべる。そんな姿にドキッとしてしまうんだから相当沼ってる。


「私の家広いのよ」


「う、うん?」


え、あれ、なに?自慢かい?


「家政婦さん雇ってたけど春に辞めちゃったのよね」


「そうなんだ?」


・・・返事はこれで合ってる?


意図が組めない会話に置いてけぼりにされてるや。


「そ・れ・で」


人差し指で心臓の位置を指差すましろん。距離が近くてマジで心臓に悪い。