私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「手術・・・?」


「ああ。それが成功すれば時間は掛かるかもしれないがまた外を歩ける可能性だってある」


勉強会をした次の日、早朝に琉生の容態が悪化したと病院から連絡が来て駆けつけた時の話。


駆けつけた時には既に回復していて、眠っている琉生の傍に居たら担当医の海斗(かいと)さんから話があると廊下に呼び出されたんだ。





この中央病院はこの辺りで一番大きい病院だ。海斗さんはここの医院長でもある。


輝久さんの紹介で知り合ったのをきっかけに昔から良くしてくれるし、医院長直々に琉生の事を診てもらえる事に感謝しかない。


入院費だってそうだ。学校に集中しろ、後々返してくれればいいと立て替えてくれた事だって一度じゃない。


信頼してる海斗さんの提案。内容だって喉から手が出るほどのものだった。


一度も病院から出た事のないあの子を色んな所に連れて行ってあげたいとずっと思っていた。


「アメリカで成功例が出たばかりの手術でな。今後容態が悪化して今以上に患者に負担が掛かる場合、その手術は難しくなる」


このタイミングを逃せばもう・・・。


「費用はどれくらいですか・・・」


「・・・600は必要だ」


600万。数十万でできるとは思っていなかったが到底払える金額ではない。


光と同時に重りが伸し掛ったような感覚は今でも覚えてる。


俺の選択であの子の未来が決まる・・・。