私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

キツい香水をまとった化粧の濃い女は言いたい放題。


俺はというと言い返す気力もなく黙ってそれを聞いていた。


「ん?あんたよく見たらいい顔してるじゃん」


襟元を掴みながら俺の顔を覗き込む女。


親父の顔は見た事も無いから分かんねーけど、お袋譲りで俺の顔は整っているらしい。


「ねぇ、おねーさん」


試しにその手を掴み目を合わせる。


途端に顔を赤くさせキョドりはじめた女。


はっ、可笑しいのー。さっきまであんなに怒ってたのに。


だけどこれはチャンスだ。


女の持ち物をよく見ればどれもがブランド物。大方男に貢いで貰ったんだろうがどうでもいい。頭が弱くて金回りのいい女。それが重要だ。





琉生をちゃんと病室に入院させつつ、最低でも高校は出る方法。それは、





「俺の事、買ってくれる?」





あの時の馬鹿なガキだった俺はこれが最善だと、賢い方法だと、思ったんだ。


それから俺は学費と病院代を稼ぐ為に身体を売った。朔夜のとこか女のとこばっか居たから、それ以外の出費と言ったら2万円の家賃ぐらいだった。


ほとんど家に帰ってないことは皆には気付かれてたと思う。けど皆の優しさに甘えて気付かないふりをした。


このまま生活していける。そう思ってたんだ。