私は‪✕‬‪✕‬を知らない I






「卒業おめでとう」


「お袋!」


朔夜達と別れてお袋の元へ卒業証書を握りしめ駆け寄る。


いつもは寝ている時間なのに、こうして来てくれた事に思わず抱きつきそうになるけど流石に恥ずかしくてやめた。


「もう病院行くわよ?」


「うん。早く琉生(るい)にも見せてやんなきゃ」


お袋の運転する車に乗り込み、中央病院へと向かう。


「琉生!」


「お兄ちゃん!」


「見てみろよ!卒業証書〜!」


「うわー!卒業おめでとう、お兄ちゃん」


静かにね、とお袋に怒られたけど2人して顔を見合わせて笑った。





10歳下の弟の琉生。


生まれた時から身体が弱くてずっと病院で過ごしている俺の大事な家族。


だからこうして会いに来ては学校の事だったり、朔夜達の話をしたりしてる。


お袋はそんな俺達を女手一つで育ててくれてるんだ。


夜の仕事をしてるお袋を世間は酷く言うけど、俺は尊敬してる。


夜遅くまで働いてるのに毎日琉生のお見舞いに来て、俺の学校だって行事があれば欠かすこと無く参加してくれてる。


周りがどう言おうと自慢の家族なんだ。


「奏は反抗期もなくいい子に育ってくれたわ。ん?これから、なのかしら」


病室の花を変えながらお袋が話す。


「俺、琉生のお兄ちゃんだからなー」


お袋が頑張ってる分、俺もしっかりしないと。


「ふふ、本当にいい子に育ってくれたわ。私、お水変えてくるから琉生の事見ててくれる?」


「うん」


旭ヶ丘の事や、高校入ったら幹部になること。琉生に話す事がいっぱいあった俺は気付かなかったんだ。







お袋が病室の外で涙を零していたことを。