私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「症候群ということは病気、なのか・・・?」


瑠璃川が恐る恐る口にする。


「症状としては、読んだ本を全て記憶している。曜日さえ分かればその日の出来事が芋づる式に思い出せる、などですね」


「そう。人によって異なるけど、私の場合はどの物事も一度頭に入りさえすれば忘れないの。だから助かっている事の方が多いのよ」


実際、以前の学校から旭ヶ丘に来れたのも情報屋としての仕事もこの力があったからだ。





「だが、忘れたい記憶も忘れられない」





その言葉に私は皇から視線を逸らした。


『──────い、きて』


か細い指が頬を撫でる。


・・・忘れたい記憶、あるさ。


だが、忘れてはいけない事だから。


この病気は戒めとしても私にとって必要なものなんだ。


この病気、赤い瞳、私の存在自体が罪だということを再認識させてくれる。


「嫌な記憶を消せないのは辛いと思う、それなら辛い記憶以上に楽しい記憶をいっぱい作れたらいいね」


「辛い記憶以上に楽しい記憶をいっぱい・・・。ふふ、そうね」


そんな風に考えた事無かったなぁ。


自然と伸びるようになった優里の頭を撫でる。


やっぱりコイツらと居ると飽きないな。