私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「くぁ、」


つい零れてしまった欠伸を手で隠す。


「ましろちゃん寝不足?」


「いつも以上に眠そうだな」


・・・しまった、恥ずかしい所を見られたな。


欠伸だったり何かを食べたりする時を見られるのはあまり好きじゃないんだ。


心配そうに顔を覗き込む2人に大丈夫と返事をしながらホームルームが始まるのを待つ。


「そういえば、奏くん明日から来れるみたいだよ」


「そうなの?」


「うん、今さっき朔夜くんに連絡あったみたい」


最後に会った日から更に1週間が過ぎ、とっくに7月に入っていた。


あの日から帰宅後水嶋について調べる日々が続いておりあいつの大方の事情は分かっている状態だ。





「はよー、ましろん」


「・・・おはよ」


次の日、あの日の出来事は何も無かったかのように明るく振舞っていたが目元のクマはより濃くなっていた。


「こんなに休んで期末テスト大丈夫なのかよ」


「いやもう、死ぬ気で頑張りますよー」


全員、その事に触れることはなくいつも通りを演じる。


それから水嶋は今まで通り学校に通い放課後はテスト勉強をこなす日々を過ごしていた。


幸いな事にその期間は水嶋もきちんと休めているようだった。


こいつらは、ああ、元に戻ったんだな。そう思っていたはずだ。