私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「ましろんってそんな事言う子だっけ。距離を置きたがったのはそっちじゃない?」


ああ、嫌な聞き方だなぁ。


私でも分からないんだ。


お前達に絆されたのは事実。それでも踏み込まれるのは怖いから、ラインは超えちゃいけないって言い聞かせてるはずなのに。


口にした事を私は後悔していないんだ。





「・・・」


「・・・」


沈黙が流れる。


この状態の人間はあまりにも脆い。


誰かが掴んでなきゃあっという間に何処かに消えてしまう。だから、


沈黙を破ってその手を掴もうとしたんだ。





パンッ──────、





私から伸ばした手はその手によって叩き落とされてしまう。


「・・・」


行き場の無い手はだらりと力を無くす。


「〜っ、ごめん。1人にして」


「水、嶋・・・」


私の声なんて聞こえないように背を向ける。


駄目だ、追いかけないと。


そう思うものの先程拒絶された記憶が邪魔をする。


拒絶されるのを望んでいた時期だってあったじゃないか。こんな時に女々しくなるな。


それに、拒絶をして今にも泣きそうになっているのはあいつの方じゃないか。


今にも大粒の涙が零れそうになりながら必死に走り出したあいつは子供のよう。


時折見せるアイツ自身だったんだ。