私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「えっと、いきなりで困るとは思うんだけどあたし綾波さんとお、おっ、」


「私とお?」


「お、お友達になりたくて!」


拳を握り締めながら振り絞るように話した春野さんは、だから見掛けてつい追いかけちゃったと続ける。


お友達ネー。











「うん、無理」


「へっ!?」








「だから無理。私友達とか要らないし」


欲しいとも思わないしね。期待させるのも悪いのできっぱりと断る。


そんなやり取りが気に食わないであろう春野さんの横にいる人物から鋭い支線が飛んでくる。ただしそれは怒りではなく、どこか安堵したような複雑な感情も入っているようで。


あんたのお友達?も良くは思ってないらしいしさっさと引いてくれないかな。


どうやら断られるとは思っていなかったようで。


その大きな瞳が揺れ、それを隠すように下を向く。


「あたし、いっつも朔夜くん達の側にいて、頼りっきりで。東の子達は仲間で、よくしてくれるし尊敬してくれてるけど、お友達は・・・。お友達は居なくて・・・っ」


ぽつり、ぽつりと、それでも確かに言葉にしていく。


「綾波さんを見た時、この子だって、理由は・・・上手く説明できないけどっ、そう感じたからっ」


ばっ、と顔を上げ視線が重なる。その顔は泣いてなどいなかった。