side,南の人間


同時刻。


薄灯りが照らす部屋で少年は床に額を付け頭を垂れていた。


「逃したってどういう事だよ!」


ガシャ─ンッと、投げられたガラス製の灰皿が背後の壁で割れる。


「申し訳ありませんっ!」


「ッチ、使えねぇ」


ベッドで上半身を起こしながら煙草に火をつける男。
その身体には何も纏って居なかった。


「ほんと短気なんだからァー」


くすくすと笑い、同じく何も纏っていない状態のまま甘い声で男に擦り寄る女。


胸よりも長い髪のお陰でその膨らみは隠れているものの、恥ずかしげもなく媚びを売る女に少年は嫌悪感を抱いていた。





「にしてもあの皇が一緒にいる女なんざ姫以外有り得ねーだろが」


「はい、下の者たちもそのように判断したようで」


「ならしょうがないよー」


縋る女を受け入れる男に少年は目を逸らした。


トップである椎名さんの面影はもう無い。


短気な所はあったけど、強さを追い求めて仲間想いな人だったのに。今ではこのように堕落してしまった。





こうなったのも全てこの女が現れてからだ。


椎名さんをはじめ南の殆どの人間がこの女に絆されてしまっている。


どうにか元の南に戻さなければ。