私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

ピピピッ、ピピピッ──────。


この重い空気を割いたのはキッチンのタイマーだった。


「・・・ひとまずご飯にしようか」


龍二の言葉でモヤモヤとした気持ちは残ったまま、この話はひとまず終わりを告げた。





「そういえばよくあの場所がすぐに分かったわね」


「街中のカメラを少々拝見させて頂いたので」


「さらっと凄いこと言うわね」



「・・・気にならないのですか?」


「何が?」


龍二と文が作ってくれたカレーを頬張りながら昴とましろんの会話を聞く。


「たかが高校生の我々にそんな芸当が出来る理由ですよ。ここに住んでる朔夜の事だって」


「・・・昴は大手セキュリティ会社の跡取りなんだ。だからたまにこうして力を貸して貰ってる」


黙ってはいるけど完全アウトだと思ってるけどねー。


「ちなみに龍二もお坊ちゃまだよ。ここだとただの一般人は俺と文だけかな?ゆうちゃん家もお店やってるし」


「確かにそこの3人は礼儀作法がやけに形になってるなとは思ったけど・・・」


チラリと朔夜の方を見るましろん。


ああ、確かにお坊ちゃまって感じではないよね朔夜は。