私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

side,奏


ガチャり、客室の扉が開いてゆうちゃんとましろんが出てくる。


「あ、皆お帰り!」


「おー、ただいま」


ぱぁっと笑顔になったゆうちゃんの目元は赤くなってたけど、どことなくスッキリした表情をしていてあの事を話せたんだなって察する事ができた。


「ごめんましろん、ちょっと時間もらえる?」


「構わないわよ」


本当はゆっくりさせてあげるべきなんだろうけど、こっちも長々と引っ張る訳にもいかないし勘弁ね。







リビングのソファに各自座る。


どことなく重たい空気の中開口一番に口を開いたのはうちのリーダーだった。


「すまなかった」


深々と頭を下げる姿に俺達も続いた。


最後にゆうちゃんも慌てて頭を下げたのが気配で分かる。


「や、やめて頂戴。私があんた達に感謝こそすれど謝られる理由なんてないわ。それに、」


俺達が恐る恐る頭を上げる中でましろんは流れるように床に額をつけ続ける。


「優里を危険な目に合わせてごめんなさい。優里の傍を離れろと言うなら従うわ。それでも、・・・できたらまだ傍に居させてください」


「やめてましろちゃん!」


ゆうちゃんと文が慌てて止める。





その光景を見て俺は唖然とするしかなかった。


・・・この子は本気で言ってるの?


『私があんた達に感謝こそすれど謝られる理由なんてないわ』


君は巻き込まれた被害者じゃないか。


あんな危ない目に合って、傷まで作って。


俺達は罵られたって何も言えない立場なのに、感謝?謝られる理由なんてない?