私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

びしゃッ、


「っ!」


冷たい液体を顔に掛けられ、その拍子に目が覚める。


ズキズキと痛む後頭部に思考が持ってかれそうになるものの必死で目を開ける。


「やっとお目覚めェ?」


上半身を起こしながら声の主を確認する。





「・・・愛ちゃん?」


声は似てるなとは思った。


だけどすぐに脳が判断出来なかったのは今まで見た愛ちゃんと容姿が異なっていたから。


スタイルを強調するような黒いお洋服に、いつもしてる眼鏡とお下げはなくて。整った顔とウェーブを描いた髪が揺れていた。


声と赤い指先さえ無ければもう少し気付くのに時間が掛かったかも。


「そんなに違う?学校だとダサい格好してるもんね私」


クスクスと笑う愛ちゃん。凄く綺麗に笑うから他の人が見たら見惚れそう。だけど、あたしは受け付けられなくて。


ぐるぐると光を一切受け付けないような真っ黒な瞳。それがさっきから不気味で仕方ない。


「・・・文くんは無事なんだよね?」


「他人の心配ー?こっちの連中がやられたって報告あったし無事なんじゃない?あの中だと1番弱そうだから文から壊そうと思ったんだけど、ああ見えて強いんだねェ。ざァんねん」


何を言っているの?


この子は本当に愛ちゃん?


でもあたしの勘が言ってる。これがこの子の本性なんだって。