私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「な、なんかここまで着いて来ちゃったけど私帰るわ」


「ダメだよ!怪我の手当てしないと!」


「その格好で帰るおつもりで?」


「ましろんの荷物預かってるけどいいのー?」


「う"」


「ほら、大人しく入る」


「お、お邪魔します・・・」


押されるようにして入ってしまった・・・。


まずこの格好のままで居る訳にもいかず差し出されたパーカーに着替えられるよう空き部屋へ案内された。


風呂も提案してもらったもののお邪魔して1時間経っていない家の浴室をお借りするのは忍びなくて丁重にお断りさせて頂いた。


しかし問題はそこじゃない。借りたパーカーをまじまじと広げる。


このパーカーは部屋主の皇のものであってだな。


着替えたのはいいものの、あまりにもアイツの匂いがして落ち着かない。


嫌な匂いでは決してなく、むしろ落ち着いていい匂いなんだが・・・。


って、何考えてんだ。


脱ぎ捨てた制服を拾いながら急いでアイツらの元へ戻ろうとすれば扉をノックする音が耳に入る。


「ましろちゃん?入っていいかな」


「ええ」


返事の後に入って来たのは救急箱を持った優里だった。


「手当しないとと思って」


なんか今朝もこんな光景見たな。


黙って頷きベッドに腰かけ包帯を巻き直して貰う。


慣れない匂いと空間にそわそわしながら大人しく待つ。