私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

そんなこんなで走り続けて十数分。連れてこられた先にあったのは世に言うタワマンというやつで。


途中から不安はあったものの、この駐車場でエンジンを切ったこいつには絶句しかなかった。


何故こんな場所に連れて来られたんだろうか。


「ここどこよ?」


再度抱えようとする皇に断りを入れ恐る恐るその後に続く。


「家」


「・・・誰の?」


「俺の?」


「なんで疑問形・・・!?」


「後で説明する」


首をくいと向ける先に顔を動かせば、入口に人集りができていた。そのうちのひとつがこちらへ走ってくる。


「ましろちゃん・・・!」


それが優里だと気付くと同時に私もその傍に走り出しその小さな身体を抱き締める。


「優里!良かった無事で・・・」


「うわーんっ!それはこっちのセリフだよぉっ」


鼻声の優里の顔に指を滑らせ何処にも傷が無いことを確認する。目は真っ赤に腫れてしまっていたがそれ以外は何とも無いようだ。


本当に良かった。


「ましろちゃんこそ何ともない?・・・って、血が付いてるよ!?その顔の傷だって・・・!」


こちらの全身をくまなく確認する優里。顔がどんどん青白くなって涙まで浮かべる始末。この子勘違いしてるんじゃないのこれ。


よくよく見ればタイツは破けてる所あるし制服も髪もボロボロ。挙句の果てには顔は一発殴られてるし・・・、そう思われても仕方ない格好だ。