私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「どうしてそれを・・・」


「丁度この建物のセキュリティルームに入った時に聞こえてきたんだよ」


なるほど。見落としていたがあの部屋に監視カメラでもあったのか。


「ひとまず戻ろっか。ここもだいぶ片付いたし」


「ああ、お前達は先に行ってろ」


「・・・分かったよ。気をつけてな」


瑠璃川も水嶋もどうしたんだ。白沢みたく挙動が可笑しい。なんで私を助けに来たりあんな申し訳なさそうな顔をしたり・・・。


皇もそうだ。急に礼を言ったりこうして慌てた様子で駆けつけてきたり。


(理解が・・・、できない)


考える事を止めて今だけはと握る手に力を込めた。





昨日に続いて建物の外に停めてあったバイクに乗せられるがなんともまぁ気まずい。かといって無理やり話題を作る必要なんてないだろうから沈黙を決め込むつもりだった。


「昨日も思ったが」


まさかこいつから話しかけてくるとは・・・。


「何よ」


「無いな」


「は?」


意図が汲めず困惑すること数秒。この状況についてのことだと理解しわなわなと怒りが込み上げてくる。


胸が無いと言いたいのかこの変態は!?


私が最も気にしている事だと言うのに!





「いて」


「ふん、これだけで済んだことに感謝しなさいよ」


信号待ちの際に1発背中にお見舞いしてやる。


このやり取りのおかげか気まずさはいつの間にか無くなっていた。


気を使ってくれたんだろうか・・・。


(とはいえ他にはなかったのか!?)