私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

部屋を後にすると細い廊下に出る。どうやらこの階はあの部屋だけだったようだ。

構造的にも今は使われていない事務所か何かだろうか。


「朔夜さん!」


階段を降りていれば下の階からやってきた人物に呼び止められる。こいつは角谷と一緒に挨拶してきた白沢だな。


「奥に3人いる。あいつらも拘束しろ」


「はい!」


元気よく返事をする白沢。そのまま奥へ行くのかと思えばこちらを見て立ち止まって中々動かない。


「あの、綾波さん・・・」


「?」


「俺達が先に伝える。まずは怪我の手当てが先だ」


「・・・分かりました」


・・・どういうことなんだろうか。


ここは探りを入れるべきではない。なんとなくそんな気がして一礼して奥へ行く姿を黙って見ていた。





下の階につけば、横になっている者や拘束されている者。そして旭ヶ丘の制服を着ている者が大勢居た。倒れている連中は私服のためそれだけで南の奴らだと認識できる。


戦力差は明確だ。


「朔夜!」


「ましろん!」


そんな中から私達の名前を呼んで近付く二人。瑠璃川と水嶋だ。


「なんであんた達もここに・・・」


「助けに来たに決まってんだろ」


「助け・・・?」


実際ありがたいんだが、優里は無事だったんだろ?なんで来る必要があるんだ?


「助けになんて来ない、・・・だっけー?あいつらにとって私は何でもない存在なんだからとも言ってたか」