私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「起きたばっかだってのによォ、随分と冷静だな。あん時の薬の匂いまで覚えてるなんざ相当東のお姫様は頭が切れるんだな?」


顎を捕まれ強引に視線を合わせられる。


不快でしかないな。それに、


「生憎だけど私、あそこの姫でもなんでもないわよ」


「はぁ!?東のトップと二人きりでバイクで出掛けてたって情報が上がってんだぞ!?」


昨日の見られてたのかよ。


「私が姫ならGPSとかですぐにあいつらが来てるはずでしょうよ」


「ッチ、なら護衛に保護されてたあの女の方か?」


やってしまったとばかりに顔を歪める男。どうやら優里は無事に逃げれたらしい。


それだけで酷くほっとした。


「とっとと解放してくれないかしら?」


「お姫様じゃなくたってあんたを助けに来るかもしれねーからなァ、しばらく人質になってくれや」


「助けに来る?」


笑わせる。







「助けになんて来ないわよ。あいつらにとって私は何でもない存在なんだから」







そう、私とあいつらの関係に名前なんてない。


そんな私を助けに来る理由なんてどこにもありやしないんだ。