私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

カフェを後にして再度アーケード内を見て回る。


とはいいつも私の思考は別のものに持っていかれていた。





私達を付ける足音が増えている。カフェに入る前と比べて確実に。





そりゃそうだ、東のお姫様がこんな無防備な状態で出歩いているんだからな。きっと応援を呼び終えた後だろう。


そんな暇を与えてしまったのはこちらの落ち度だな。


「ごめん優里、走るよ!」


「え、ええ!?」


藤城に状況を軽くまとめたメッセージを飛ばし優里の腕を掴み走り出す。


さり気なく撒けないか人混みの多いルートを選んだつもりだが人数が人数だ。可能性は低いだろう。このままじゃ一気に詰められて優里は連れて行かれてしまう。


相手の人数も分からない状態ではこちらに分があるという考えは捨てるべきだ。


「おい!逃げたぞ!!」


「追え!」


そんな声が人混みの後ろから聞こえる。流石に優里も気付いたのか懸命に足を動かす。


どこだ?どこにいる!?


記憶を頼りにある人物を探す。


「待ちやがれ!」


まずいっ、追ってくる奴らがもうすぐ側まで来てる。


はやく、どこだ!?


「───!そこのお前!」


「はい?って、姫と綾波さん!?」


細道を抜けた先に緑色の髪をしたうちの制服を着た男子生徒が見え呼び止める。


こいつは先程水色の髪の男子生徒、────角谷 流星と共に私達を離れていた所から見張っていたやつだ。