その瞬間にやってしまった、と思った。


何故なら文くんは女性が苦手だから。
話すのが苦手、とかそういうレベルじゃない。
視界に映すのも駄目なんだ。


事情を知っているから自分の軽はずみな行動を後悔した。


多分文くん、今怖い顔してる。


そう思っていたのに。


「ああ、だな・・・」


何処か浮ついた様子で顔を赤らめながらそうこぼした。


文くんも見とれてる・・・。


初めて見る幼馴染みの表情に驚いた。


かくいうあたしもそれ以降は綾波さんから目が離せなかった。容姿もそうなんだけど、彼女の存在感に魅了されて。


あたしはこの感覚を知っている。


これは朔夜くん達のと一緒だ。


だからかな?直感が綾波さんの事をもっと知りたいって伝えてくる。


あたしのこういう直感は外れたことは無いんだ。


「皆の反応、先生もよーく分かるぞ。だがずっと固まってる訳にもいかねーだろ?口開いたままのやつは閉める。鼻血垂らしてる奴は箱ティッシュやるから鼻に詰めとけ?そんで気絶してる奴いたら起こしてくれー」


てきぱきと指示を出す声に皆がはっとして動きだす。あたしも鼻血出てないかだけ確認しなきゃ・・・。