星の涙に月が触れた。
数多の星くずが溢れる夜空で、月だけが星の涙を掬いあげた。

掬われた星は何を思っただろうか。
涙で冷えた星に掌の温もりはあまりに熱であった。
初めての温度に星は言葉を紡いだ。

「あなたに触れさせてしまったことが悲しいの、お月さま」

星は一度涙を拭うとまた夜空の海へ飛び込んだ。
今度は月に見つからないように。
月の光さえ届かぬ深藍で涙を流す為に。

嗚呼、今夜は月が綺麗ですね。天気はあまり良くありませんが。

「お月さま、星も綺麗に映る時が来るでしょうか」


おしまい。