雨の日の出会い

 電車の中で智史と色々なことを話した。と言っても主にこれから行く水族館の話だが、途中で智史が年上だったことがわかった。祐希は高校三年生だが、智史は大学ニ年生だ。

「じゃあ敬語の方が……」
「年近いし必要ないよ。何なら呼び捨てでもいいくらい」
「そ、そんな急にっ?!」

 いきなり出会って間もない年上を呼び捨てるのは、さすがに躊躇われる。祐希の動揺を見てとった智史はクスクス笑い出した。

「僕も祐希って呼ぶから。ね?」
「わ、分かった。えっと、智史……さん」

 名前を呼ばれてどぎまぎしつつ、半ば追い詰められた状況で呼ぶことになった。照れまじりに敬称をつけると、その呼び方に智史は「うーん」と唸って自身の後頭部を掻いた。

「何か、改まって呼ばれると照れるな」
「……ッ、智史がいいって言ったくせに!!」
「ああ、うん。それくらい勢いがある方がいいね」

 咄嗟に敬称なしで言い返したら、相槌を打たれてしまった。どうも彼といるとペースに飲まれている気がする。一人っ子で育ってきた祐希に兄弟はいない。もし兄がいるとしたら、こんな感じなのだろうか。友達と一緒に居る時とは何となく違う感覚。妙に緊張するし他愛ないやり取りに焦ってしまって、とにかく落ち着かない。

「あ、見えてきたよ」

 そうこうしているうちに、電車は最寄駅寸前まで来ていた。窓から水族館の建物が見える。駅から歩く人達は多いが、まだ外で待っている人はいないようだ。電車が止まって駅に降りると、彼の隣を並んで歩く。
 初めて行く水族館より、初めて知る彼の一面に少し嬉しくなる。勿論、そんなことは口にできないのでそっと胸の内に仕舞った。