雨の日の出会い

 翌々日。
 青空が広がっているにも関わらず、祐希は傘を二本持っている。一本は返却する黒い傘、もう一本は透明なビニール傘。万が一雨が降ってきた時に傘を借りないためだ。今日こそは返すと意気込んで駅前で待っていると、正面から智史が駆けてくる。

「天野くん、ごめん。また待たせちゃったね」
「いや、大丈夫。これ、ありがとう」

 名前を呼ばれて動揺しかけたが、借りていた傘を返した。智史がちらりと視線を落とす。祐希がもう片方の手に持っている傘に気付いて笑いをこらえている。

「それ、もしかして雨降った時の為に?」
「あ、うん。今日は絶対返そうと思って」

「気にしなくて良かったのに。こんなに晴れてて傘二本持ってたら目立ったでしょ」

 まさしく図星を突かれて、祐希は乾いた笑いを返した。駅で何人の人に見られたか数えたくはない。
 やっと目的を果たしたが、それは同時に智史との別れを意味する。傘の貸し借りがなければ会うことはない。少し寂しく感じるが、昨日今日と祐希の為に二度も足を運んでもらったのだ。彼にこれ以上迷惑はかけたくない。ざわつく胸の内を悟られないよう、深々と頭を下げた。

「連日ありがとう。おかげで助かった」
「そんなに改まってお礼されたら、もう会えないみたいで困るな。少し頼みたいことがあったんだけど……」

「え?」

 まさか彼からそんな言葉が返ってくるとは思わず、驚いて顔を上げた。そんな祐希の反応に智史は頬をかきながら茶色の瞳を和ませる。

「もし良かったら僕と水族館に行ってくれない?」