雨の日の出会い

「どうって……」

 それは是が非でも——聞きたい。聞きたいけど……聞いてしまったら、傘を借りて遊びに行っただけの関係ではなくなるかもしれない。また仕事の邪魔をして、迷惑をかけるだけになってしまうかもしれない。少なくとも悪く思われてはいないのだから、今のまま知らない方がいいのかもしれない。

「……あのっ、」
「はい、時間切れー。もう大分待ったからいいよね。本当は雨の中、追いかけて行った時に言いたかったけど、寒いしそれどころじゃなかったから」
「う、あ……それは、ごめん」

 ぐるぐると祐希の中で目まぐるしく変わる思いも虚しく、智史の腕が伸びてくる。追いかけてきてくれた時と同じように優しく抱きしめられた。もう、体の中で高く鳴っている音をごまかせそうにない。
  初めて出会った時から、ずっと感じていた思い。未だにこの思いを伝えることに不安や葛藤はある。それでも、もしも智史が同じ気持ちなら応えたい。伝えたい。

「今度は嘘じゃないから」
「うん」
「祐希が、好きだよ」

「……うん。あのっ、俺も、……」

 伝えたいと思っているのに、続く言葉が声にならない。さらりと好きだと伝えられるほど頭の中が整理できていなくて、それでも伝えたくて口を開く。

「智史が……、」
「別に無理しなくていいよ。祐希の気持ちは分かってるし」
「え……そう、なの?」
「さすがに確信もなく同性相手に好きだと言える度胸はないからね」

 思えば彼はカウンセラーを生業にしているのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。言わなきゃと焦っていた気持ちがすっと楽になった。今なら言える気がする。

「……俺も、智史が好き」

 背中に腕を回して見上げたら、さっきまで余裕だった顔が薄く染まっている。珍しい変化をまじまじと見ていると、勢い良く抱き寄せられて見えなくなった。

「嬉しいけど不意打ちで悔しい。そのダボダボの服も見た瞬間、可愛くて焦ったよね」
「え、あ、あのとき洗面所で慌ててたのってそういうこと……っていうか男なんだから、別に服くらい」
「そんなこと言って祐希も水族館行く時に僕の服装見てたでしょ?」
「な、何でバレてんの?! い、いや見惚れてなんかなかったし!」

 あーだこーだと言い合いは続き、やがて二人で顔を見合わせて笑った。
 雨の日の出会いは、まだこれからも続いていく。