「僕も祐希に彼女がいたら気になるな」
「何で……?」
「弟みたいだから」
「そう、なんだ」
とても兄弟とは似つかわしくない距離感に戸惑ったまま、彷徨わせていた視線を正面に向けた。さっきまでの圧力は消えて、吸い込まれるようなブラウンの瞳がまっすぐ見つめてくる。あまりに綺麗な色と柔らかな表情に、鼓動がどくんと鳴り響いた。
初めて智史と会った時も、今と同じようにどくどくと心臓の音が早くなった。あの時は何か分からなくて、今は認めてはいけないと思っている。水族館でも知らない女性から声をかけられるほどに男前で、人気のカウンセラー。彼を慕う人はごまんといるだろう。
——だから、違う……違うんだ。
弟みたいと言われて覚えた違和感も、寂しさも、全部気のせいだと思いたくて、ぎゅっと目を閉じた。
「嘘」
「え、……」
「弟みたいだなんて思ってないよ」
「……うそって、なんで?」
「祐希がお兄さんみたいだって言ったから。だからちょっと仕返ししたくなったのに、そんな顔するから……」
ドアについていた手が祐希の頬を撫でる。
「いじめて、ごめん」
「……俺、いじめられてたの?」
「祐希って上履きとか無くなっても、どこかで履き忘れたと思ってそうだよね」
頬を撫でていた手が頭に伸びて、髪をくしゃくしゃ乱される。上履きが無くなったら履き忘れたというより探す方が先だろうか。でもどこかで見つかったら、履き忘れたのかもしれないと思うのだから同じことだろうか。その話にどんな意味があるのか分からず祐希が首を傾げると、智史は「何でもない」と笑った。
「いじめたお詫びに、僕が祐希のことをどう思ってるか言おうか?」
「何で……?」
「弟みたいだから」
「そう、なんだ」
とても兄弟とは似つかわしくない距離感に戸惑ったまま、彷徨わせていた視線を正面に向けた。さっきまでの圧力は消えて、吸い込まれるようなブラウンの瞳がまっすぐ見つめてくる。あまりに綺麗な色と柔らかな表情に、鼓動がどくんと鳴り響いた。
初めて智史と会った時も、今と同じようにどくどくと心臓の音が早くなった。あの時は何か分からなくて、今は認めてはいけないと思っている。水族館でも知らない女性から声をかけられるほどに男前で、人気のカウンセラー。彼を慕う人はごまんといるだろう。
——だから、違う……違うんだ。
弟みたいと言われて覚えた違和感も、寂しさも、全部気のせいだと思いたくて、ぎゅっと目を閉じた。
「嘘」
「え、……」
「弟みたいだなんて思ってないよ」
「……うそって、なんで?」
「祐希がお兄さんみたいだって言ったから。だからちょっと仕返ししたくなったのに、そんな顔するから……」
ドアについていた手が祐希の頬を撫でる。
「いじめて、ごめん」
「……俺、いじめられてたの?」
「祐希って上履きとか無くなっても、どこかで履き忘れたと思ってそうだよね」
頬を撫でていた手が頭に伸びて、髪をくしゃくしゃ乱される。上履きが無くなったら履き忘れたというより探す方が先だろうか。でもどこかで見つかったら、履き忘れたのかもしれないと思うのだから同じことだろうか。その話にどんな意味があるのか分からず祐希が首を傾げると、智史は「何でもない」と笑った。
「いじめたお詫びに、僕が祐希のことをどう思ってるか言おうか?」
