「あ、えっと……その、電話の相手が彼女じゃないのは分かったけどさ」
「うん」
「……そもそも彼女っているの?」
祐希の問いに智史は少しだけ瞠目したが、すぐにまた口元を和らげた。
「いないよ。彼女はいない。ついでに仕事のことは親以外、誰にも言ってない。知ってるのは祐希だけだよ」
「……そっか」
勘違いして彼のプライベートに踏み込んだのは申し訳ないが、智史の言葉にホッと息をもらした。それでもずっと迷惑をかけてきたのだ。これからは仕事の邪魔をしないよう傘を持って学校に行こう。
「だからまた、誘ってもいい?」
「え? ……でも、仕事の邪魔じゃない?」
極力仕事の邪魔をしないようにと考えたのに真逆のことを言われて祐希は首を傾げる。その返答に何故か溜息をついた智史は、携帯をデスクに置いて歩み寄ってきた。
「祐希、何で僕に彼女がいるか聞いたの?」
「気になってたから……」
「何で気になったの?」
「それは……」
眼前で立ち止まった智史を前に、祐希は口を噤んだ。気になっていた理由。どうして彼女がいるかいないかで一喜一憂してしまうのか。最初は分からなかったけれど、智史が水族館を一緒に楽しんでくれていたのだと知って少しだけ分かった気がした。でもそれは、同性に抱くはずのない思いだと考えている。だから「何で?」という疑問に対する答えを祐希は持ち合わせていない。
「俺が智史のことを……」
「僕のことを?」
「お兄さんみたいに思ってるから?」
「…………まあ、そうくると思ったよ」
考え抜いた末に出した結論は、なぜかお見通しと言わんばかりで、にっこり口角をあげた智史の顔に妙な圧力を感じて後ずさる。じりじりと後退しているうちにドアに背が当たり、逃げ場がなくなった。両手をドアにつき見下ろす彼の雰囲気に飲まれ、視線を合わせられずにいるとコツンと額が重なる。
「うん」
「……そもそも彼女っているの?」
祐希の問いに智史は少しだけ瞠目したが、すぐにまた口元を和らげた。
「いないよ。彼女はいない。ついでに仕事のことは親以外、誰にも言ってない。知ってるのは祐希だけだよ」
「……そっか」
勘違いして彼のプライベートに踏み込んだのは申し訳ないが、智史の言葉にホッと息をもらした。それでもずっと迷惑をかけてきたのだ。これからは仕事の邪魔をしないよう傘を持って学校に行こう。
「だからまた、誘ってもいい?」
「え? ……でも、仕事の邪魔じゃない?」
極力仕事の邪魔をしないようにと考えたのに真逆のことを言われて祐希は首を傾げる。その返答に何故か溜息をついた智史は、携帯をデスクに置いて歩み寄ってきた。
「祐希、何で僕に彼女がいるか聞いたの?」
「気になってたから……」
「何で気になったの?」
「それは……」
眼前で立ち止まった智史を前に、祐希は口を噤んだ。気になっていた理由。どうして彼女がいるかいないかで一喜一憂してしまうのか。最初は分からなかったけれど、智史が水族館を一緒に楽しんでくれていたのだと知って少しだけ分かった気がした。でもそれは、同性に抱くはずのない思いだと考えている。だから「何で?」という疑問に対する答えを祐希は持ち合わせていない。
「俺が智史のことを……」
「僕のことを?」
「お兄さんみたいに思ってるから?」
「…………まあ、そうくると思ったよ」
考え抜いた末に出した結論は、なぜかお見通しと言わんばかりで、にっこり口角をあげた智史の顔に妙な圧力を感じて後ずさる。じりじりと後退しているうちにドアに背が当たり、逃げ場がなくなった。両手をドアにつき見下ろす彼の雰囲気に飲まれ、視線を合わせられずにいるとコツンと額が重なる。
