雨の日の出会い

 ここに座るのが分かっていたのか、テーブルの上には湯気の立つマグカップが置かれていた。手に取ると鼻腔を擽る匂いがする。どうやらココアのようだ。

——飲んでってことなんだろうけど……

 甘い香りに気が進まないまま一口だけ飲むと優しい味わいがした。牛乳がないからお湯で溶かしてあって、それほど甘くはない。何口か飲み進めると体が温まっていくと同時に、気持ちも冷静になっていく。落ち着いたところで智史もシャワーから出てきた。濡れた髪をタオルで拭く彼は祐希と同じ格好をしている。

「智史は青系の色が好きなの?」
「まあ、落ち着くからね」

 出会った時は紺色のジャケットを着ていたし、用意された服もサクセスブルーだった。実際青系の色は智史によく似合っている。
 
「うーん、と何から話そうか。先に見てもらう方が早いかな。こっち来て」

 リビングから廊下に向かう智史に促されるまま立ち上がり、何を見るのか分からないまま後を追う。右側のドアはお風呂場があったが、智史は左側のドアを開けて中へと招いた。緊張しつつそっと覗いてみると、机の上にはパソコンが二台並んでいる。そしてパソコンの前にはインカムのついたヘッドセットが置かれていた。

「祐希はカウンセリングって知ってる?」
「何となく。困った時に相談することだよね?」
「そうそう。色々な相談方法があってね」

 パソコンの前の椅子に腰かけて、水色のヘッドフォンを首にかけた智史が振り向いた。

「僕は主にインターネットを利用した悩みや不安なことについて、電話をしたりチャットをして相談を受ける仕事をしてる」
「そうなんだ……」

 学校の授業でパソコンを使う程度の祐希にとっては未知の世界だが、音楽などを配信して仕事をしている人がいることくらいは知っている。つまり智史もインターネットを使って仕事をしているということは把握できた。