マンションのドアを開けて外に出たら、暗い空から土砂降りの雨が降っている。それでも傘を借りに戻ることはとても考えられなくて、雨のなかカバンを頭に乗せて飛び出した。いきなり黙っていなくなって、きっと智史を驚かせてしまったに違いない。傘を借りるよう言われていたのに、何も持たず出てきてしまった。あの場に留まっても合わせる顔がないが、また駅前で会ったとしてもどんな顔をすればいいのだろうか。冷たい雨に打たれて、少しだけ冷静になった頭で考える。
——ただ、何となく……
何となく裏切られた気持ちになった。楽しくて嬉しかったのは自分だけなんだと。智史の口から聞いたわけでもないのに、そう思ってしまう。駅で初めて会って、一緒に出かけて、また会えて、家に招かれて、仲良くなれると思っていた。仲良くなりたかった。例え彼女がいたってそれができなくなったわけではないのに、どうしてこれほど寂しいのだろう。
考えているうちに走っていた足が完全に止まってしまっていた。全身ずぶ濡れになっていて、髪から落ちてくる滴は、にじんだ涙をかき消していく。一度家に帰って落ち着こう。そう考えて、祐希が再び走り出そうとした瞬間——
「ゆうきっ!!!!!!」
背後から大きな声が聞こえて思わず振り返る。そこには傘もささずに息を切らしている智史がいた。
「あ、なんで……」
「それはこっちの台詞! 何で傘も持たずに出て行ったの?」
乱れた息を整えながら珍しく怒っているような智史の雰囲気に圧倒され、祐希は押し黙る。何でと聞かれても明確に話せるだけの答えがない。頭からカバンを下ろしたまま黙っていると、近くに寄った彼の手が濡れた祐希の頭を撫でた。
「こんなに濡れて、また風邪引くよ」
また? 出会ってから今まで一度でも風邪を引いたことがあっただろうか。ふと疑問に思ったが、それよりも髪に触れる優しい手の温もりに意識を奪われた。怒ったわけじゃなくて心配してくれたんだ。そう気付いて顔を上げると、智史はいつもの笑みを浮かべていた。
「急に出て行って、何かあった?」
「…………」
何かあったといえばあったが、あくまで祐希自身の気持ちの問題を彼に伝えるのは憚られる。上手く伝えられるかも分からない。でも雨の中、傘を差す間も惜しんで追いかけてきてくれた智史に、黙ったままでいるのも嫌だった。祐希は唇をきゅっと噛んで、意を決して口を開く。
——ただ、何となく……
何となく裏切られた気持ちになった。楽しくて嬉しかったのは自分だけなんだと。智史の口から聞いたわけでもないのに、そう思ってしまう。駅で初めて会って、一緒に出かけて、また会えて、家に招かれて、仲良くなれると思っていた。仲良くなりたかった。例え彼女がいたってそれができなくなったわけではないのに、どうしてこれほど寂しいのだろう。
考えているうちに走っていた足が完全に止まってしまっていた。全身ずぶ濡れになっていて、髪から落ちてくる滴は、にじんだ涙をかき消していく。一度家に帰って落ち着こう。そう考えて、祐希が再び走り出そうとした瞬間——
「ゆうきっ!!!!!!」
背後から大きな声が聞こえて思わず振り返る。そこには傘もささずに息を切らしている智史がいた。
「あ、なんで……」
「それはこっちの台詞! 何で傘も持たずに出て行ったの?」
乱れた息を整えながら珍しく怒っているような智史の雰囲気に圧倒され、祐希は押し黙る。何でと聞かれても明確に話せるだけの答えがない。頭からカバンを下ろしたまま黙っていると、近くに寄った彼の手が濡れた祐希の頭を撫でた。
「こんなに濡れて、また風邪引くよ」
また? 出会ってから今まで一度でも風邪を引いたことがあっただろうか。ふと疑問に思ったが、それよりも髪に触れる優しい手の温もりに意識を奪われた。怒ったわけじゃなくて心配してくれたんだ。そう気付いて顔を上げると、智史はいつもの笑みを浮かべていた。
「急に出て行って、何かあった?」
「…………」
何かあったといえばあったが、あくまで祐希自身の気持ちの問題を彼に伝えるのは憚られる。上手く伝えられるかも分からない。でも雨の中、傘を差す間も惜しんで追いかけてきてくれた智史に、黙ったままでいるのも嫌だった。祐希は唇をきゅっと噛んで、意を決して口を開く。
