雨の日の出会い

 聞き馴染んだ声が聞こえてハッと顔を上げると、二週間ぶりに見る彼が立っていた。だが、差し出されたその手には傘がない。

「久しぶり。どうぞなんて言ったけど、傘は持ってないんだ」
「そっか。まあ、大丈夫。何とか――」

 帰るよ、と言おうした声を智史が遮った。

「だから僕の家、寄っていかない?」
「へ? ……えっ、家?!」

 激しい雨音で聞き間違えたのかと思い、間抜けな声が出た。何の音沙汰もなかった彼と会って、しかも家に招かれるなど青天の霹靂だ。祐希の混乱を余所に智史は空を見上げる。

「しばらく止みそうにないし、どうかな。祐希が嫌なら家に帰って傘取ってきてもいいよ」
「あ、いや、嫌じゃないけど……急に押しかけたら、家族の人とか迷惑じゃないかなって」
「一人暮らしだから気にしなくて大丈夫」

 ワンルーム以上はありそうな高層マンションで一人暮らしとは思わず、彼の顔をしげしげと眺め見る。未だ戸惑ったままの祐希に、智史は穏やかな笑みを向け「おいで」と先導して歩き出した。はやる胸のうちを抑えて、祐希は慌てて後を追った。