雨の日の出会い

 イルカショーの始まる場所は既にたくさんの人で賑わっている。空いている場所はイルカがジャンプした時に水飛沫が飛んでくる席か立ち見くらいで、他は全て埋まっていた。

「立ち見にする?」
「智史はどっちがいい?」
「そりゃあ……」

 チラリと彼が視線を送ったのは水飛沫が飛んでくる席だ。楽しみにしていたイルカショー。近くで見られる方がいいに決まってる。

「だよな。最前列に行こう。よく見えるしさ」
「びしょ濡れになるけど、いいの?」
「おかげさまでしばらく雨には濡れなかったし、俺も近くで見たいから」

 通路を歩きながら祐希はニッと笑って、ここぞとばかりに返す。「ありがとう」と言った智史の顔は、これまで見た中で一番嬉しそうだった。席に座ると開演の笛が鳴り、イルカ達が一斉に丸い水槽の中を泳ぎ回る。

「イルカショーにようこそお越しくださいました! まずは自己紹介を致しま〜す! バンドウイルカのカイくんとルカくんです!」

 観客席を見渡せる位置に立ったトレーナーのお姉さんが二頭に餌をあげると、イルカ達は元気よく泳ぎ始めた。
 そして智史と祐希の目の前で大きくジャンプ!

「うわっ!!」

 ざぱんという音に続いて、大量の水が飛沫となって降り注ぐ。観客全員拍手で盛り上がる中、早速髪や顔がぐっしょり。智史と祐希は顔を見合わせて吹き出した。

「続きましてアキくん! 得意のくす玉割りでみなさんをお出迎えしてくれまーす!」

 水槽の中を一泳ぎして真ん中でジャンプしたイルカは口先で器用にくす玉を割った。中から「いらっしゃいませ」と歓迎の垂れ幕が降りる。再び拍手が鳴り響き、智史と祐希も濡れた手を叩いて目を輝かせた。