運命の再会は閉店後に ~小さな奇跡がふたりを結ぶ~

「ハコちゃん、次の仕事って決まってるの?」
「ううん……」
「だったらさ、東京に出るのもありだと思うよ」
「えっ……」

 戸惑(とまど)う私にギドウくんが続ける。

「俺、力になるよ。俺の住んでる部屋、3LDKなんだ。だからさ、泊まるとこがないならウチに……って、変な意味じゃなくて」
「ありがとう」

 素直にお礼が言えた。
 ずっと迷っていた。
 踏み出そうと思っていた新しい世界への第一歩。

 あの柱時計の音が浮かぶ。
 ずっと止まっていた時計の針が動いたあの奇跡――。

(ギドウくんに言うとおり、勇気を出して動きだせ、って言ってるみたいだった……)

 確かに運命だったのかもしれない。
 少しでも時間がずれていれば、私たちは再会せず、私は一人で店を閉めていた。

「ハコちゃんが東京に来てくれると嬉しい」
「えっ……」

 ギドウくんの顔が赤い。そして、せわしなく(あご)を撫でている。

「今日、わかった。俺、やっぱりハコちゃんのことが好きだ」

 息を呑む私を、ギドウくんがまっすぐ見つめてくる。

「ずっと忘れられなかった」
「私も……」

 自然とその言葉が口をついて出た。
 運命が動き出した。
 そんな気がした。