明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

「……一将様を不快にさせて、すみません……」

『違うぞ』

 一将は、語気を強めるでもなく、ただ静かに告げた。

『謝罪が欲しくて言ったのではない。自分を、自分で貶めるなと申しておる。
 玲子殿には、他の誰にもない優しさがある。それを、もっと自分自身が知るべきだ』

「自分自身の価値ですか?」

『そうだ、自分を価値のない者として扱ってはならぬ。これからは、自分を貶めるような言葉を、決して口にしてはならん』

「でも……」

 玲子はギュッと両手を握りしめ、伏し目がちに手元を見つめた。
 誰からも愛されず、ハズレ者として扱われた日々。
 どうやって「自分を認める」のか、その術さえ、玲子にはわからなかった。
 そんな玲子を見て、一将はふっと優しい目になった。

『では、手始めに、まず、自分を卑下する言葉は禁止。
 そしてもうひとつ。将吾や尚文に、もっと我が儘を言って甘えてみるがよい。
 きっとあやつらは、玲子殿の願いなら、喜んで受け止めてくれるはずじゃ』

「……我が儘、ですか?」

『うむ。したいこと、欲しいもの。なんでも良い。遠慮せずにねだるがよい』

 あまりにも意外な提案に、玲子はぽかんと口を開けたまま、目をぱちくりさせた。

「わたくしなんかが……」

 言いかけた瞬間、一将の鋭い視線が飛ぶ。

『コラッ!』