「将吾様、お着物を仕立てるにあたって、採寸をさせていただいてもよろしいでしょうか? 定規をお借りできますか?」
上目遣いに見上げられ、胸がドクンと鳴る。
思わず視線を逸らし、将吾は廊下へ向き直った。
「……ああ。すぐに用意させよう」
使用人を呼ぶその背中は、妙にそわそわと落ち着かない。
そして、浮き足立つ将吾の様子を、玲子はまだ知らなかった。
暫くして、ドアがノックされ、廊下から声が掛かる。
「失礼、頼まれた道具を持ってきたよ」
入ってきたのは、尚文だった。
「まあ、尚文様にお手間を取らせてしまって、申し訳ありません」
玲子が慌てて立ち上がると、将吾はやれやれといった顔になる。
「……なんだ、また来たのか」
「いいじゃないか。たまたま近くまで来たんだから立ち寄ったってバチは当たらないだろ。それで、定規なんかを用意して、ふたりは何の話をしてたの?」


