明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~


「将吾様には……ご迷惑ばかりかけております」

『玲子殿のおかげで、将吾も尚文も命拾いしたのだぞ。それに、玲子殿が襲われたのも、藤堂に関わったが故かもしれん。むしろ、迷惑を掛けているのは我らの方だ。もっと威張っても良いくらいだ』

「威張るだなんて、とんでもありません……」

 玲子が控えめに目を伏せた、そのとき、コンコン、と控えめなノック音が扉を叩いた。

「はい、どうぞ」

 玲子が返事をすると、木目の扉が静かに開く。
 現れたのは、将吾だった。
 彼の姿を見た途端、空気を読んだ一将は、ふわりと空中に溶けるように姿を消した。

「玲子殿、少し話をしてもいいかな?」

 背が高く、端正な顔立ち、鍛えられた体躯。
 パーティーで見た燕尾服姿も、昨晩の軍服姿も凛々しかった。けれど、家で過ごすリラックスした着流し姿の将吾には、別の艶やかさがあった。まるで、滲み出る男の色気に包まれているようで、男性に免疫のない玲子は、思わずぽーっと見とれて、頬を赤く染めてしまう。

「顔が赤いな。熱でもあるのか?」

 気づけば、将吾はすぐ目の前にいた。息が触れそうなほどの距離。
 そっと手を伸ばし、玲子の頬に触れる。
 綺麗な二重の瞳に見つめられ、玲子の胸の鼓動はトクトクと早くなった。

「あ、あの……」